刀に関することわざ
普段何気なく使っている言葉の中にも、刀に関することわざがよく出てきます。上の刀の各部の名称も参考になります。
押取り刀とっさの事で、腰に差すひまもなく、急いで手にとる刀。大急ぎで駆けつけることを表すときに使う。
※押取り刀とは
品質や価値、人格や技術などに定評があったり、保証付きであることを「折り紙つき」と表現する。
昔、公式文書や進物用、鑑定書などに「奉書紙(ほうしょし)」という紙を使っていた。この奉書紙は最上質の和紙で、もともと上意を下の者に伝える時に使われていたもの。
※折り紙とは、
この奉書紙を2つに折って特に鑑定用に用いた紙のこと。
江戸時代には刀剣鑑定の本家の本阿弥家が2つ折りにした奉書紙を刀の鑑定書に用い、その鑑定書がついた刀剣は「折り紙つき」の刀剣で、またそれは「折紙太刀」と呼ばれるようになった。そこからこの言葉が一般に広まり、信頼できる人など、物以外にも使われるようになったもの。
※そのほかにも
急場凌ぎ・鞘当て・地金が出る・鎬を削る・助太刀・相槌を打つ・一刀両断・切羽詰る・太刀打ちができない
反りが合わない・単刀直入・伝家の宝刀・付け焼刃・鍔ぜりあい・懐刀・抜き打ち・両刀使い・目貫通り
もとの鞘に納まる・抜き差しならない・焼きを入れる・諸刃の剣・焼きが回る
百足伝
百足伝とは、武道の心得を詠んだ道歌です。
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稽古には 清水の末の 細々と 絶えず流るる 心こそよき
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夕立の せきとめかたき やり水は やがて雫も なきものぞかし
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うつるとも 月も思わず うつすとも 水も思わぬ 猿澤の池
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幾千度(いくちたび) 闇路をたどる 小車の 乗得てみれば 輪のあらばこそ
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稽古には 山澤河原 崖や淵 飢えも寒暑も 身は無きものにして
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吹けば行く 吹かねば行かぬ 浮き雲の 風に任する 身こそやすけれ
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山河に 落ちて流るる 栃殻も 身を捨ててこそ 浮かぶ瀬もあれ
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わけ登る 麓の道は 多けれど 同じ雲井の 月をこそ見れ
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兵法は 立たざる前に 先づ勝ちて 立合てはや 敵はほろぶる
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體と太刀と 一致に成りて まん丸に 心も丸き これぞ一圓
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稽古にも 立たざる前の 勝にして 身は浮島の 松の色かな
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曇りなき 心の月の 晴やらば なす業々も 清くこそあれ
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軍(いくさ)にも まけ勝あるは 常の事 まけて負けざる ことを知るべし
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とにかくに 本を勤めよ 末々は ついに治る ものと知るべし
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兵法の 奥義は睫の 如くにて あまり近くて 迷いこそすれ
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我流を つかはば常に 心還(また) 物云ふ迄も 執行(修行)ともなせ
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我流を 使ひて見れば 何もなく ただ心して 勝つ道を知れ
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兵法の 先(せん)は早きと 心得て 勝を急(あせ)って 危うかりけり
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兵法は つよきを能きと 思なば 終には負けと 成ると知るべし
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兵法の 強き内には つよみなし 強からずして 負けぬものなり
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立会はば 思慮分別に 離れつつ 有そ無きぞと 思ふべからず
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兵法を 使へば心 治まりて 未練のことは 露もなきもの
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朝夕に 心にかけて 稽古せよ 日々に新たに 徳を得るかな
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長短を 論することを さて置て 己が心の 利剣にて斬れ
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前後左右 心の枝 直ぐならば 敵のゆがみは 天然(しぜん)と見ゆ
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雲霧は 稽古の中の 転変そ 上は常住 すめる月日ぞ
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兵法は 行衛も知らず 果てもなし 命限りの 勤とぞ知れ
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我流を 教へしままに 直にせば 所作鍛練の 人には勝べし
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麓なる 一本の花を 知り顔に 奥もまだ見ぬ 三芳野の春
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目には見え 手には取れぬ 水中の 月とやいはん 流儀なるべし
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心こそ 敵と思ひて すり磨け 心の外に 敵はあらじな
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習より 慣るるの大事 願くは 数をつかふに しくことはなし
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馴るるより 習の大事 願くは 数もつかへよ 理を責めて問へ
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屈たくの 起る心の 出るのは そは剣術に なるとしるべし
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世の中の 器用不器用 異ならず 只真実の 勤めにそあり
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兵法を あきらめぬれは もとよりも 心の水に 波は立つまじ
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剣術は 何に譬へん 岩間もる 苔の雫に 宿る月影
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性(さが)を張る 人と見るなら 前方に 物あらそひを せぬが剣術
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兵法は 君と親との 為なるを 我身の芸と 思ふはかなさ
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一つより 百まで数へ 学びては もとの初心と なりにけるかな